大判例

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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)7105号・昭37年(ワ)8739号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕登記抹消請求権は、登記抹消の理由が異る毎に別箇に発生するものではないから、無権代理を理由とする登記抹消請求を棄却した確定判決の既判力は、弁済を理由とする登記抹消請求に及ぶ。

〔判決理由〕一、原告は被告三名に対して請求の趣旨第一項から第三項までに掲げた各登記の抹消登記手続を求めているが、原告がさきに被告三名を相手どり、前記各登記の抹消登記手続を求める訴を当裁判所に提起し(東京地方裁判所昭和二九年(ワ)第四七〇五号所有権移転登記等抹消登記手続等請求事件)、訴外足立酉三が原告の代理人と称して本件土地建物を担保に被告何から金一三〇万円を借り受け、原告の知らぬ間に同被告との間に抵当権設定、代物弁済の予約をしたから前記各登記はいずれも無効であると主張したところ、東京地方裁判所は、原告の請求を棄却するとの判決を言渡し、これに対して原告は、控訴、上告をしたが、いずれも棄却されたことは、当事者間に争がない。

原告は本訴の請求の原因は(1)足立酉三が被告沢登千明より工事代金の支払を受ける方法として同被告が昭和二九年三月一〇日被告何宜如より金一九〇万円を借り入れ、その内金をもつて原告名義の被告何に対する金一三〇万円の貸金元利金債務を弁済したから、被告等の各登記は抹消すべきであること(2)被告沢登の昭和二九年三月一八日受付の各登記は、足立酉三の無権代理による登記であるから無効であること(3)被告沢登が昭和二九年三月一〇日足立の債務を弁済し抵当権を譲り受けたとすれば、それは足立、被告沢登、被告何の三者の約定に反する背信行為であつて民法第一条に違反し無効であること、を主張するもので、前訴と請求原因を異にするから前判決と牴触しないと主張する。

しかしながら、前訴においても本訴においても審判の対象となつている訴訟物は、登記抹消請求権であつて、この請求権は登記抹消の理由が異る毎に別箇に発生するものではなくて、理由がどのようなものであろうとも、単一の権利であると解するのが相当である。原告が登記抹消の理由として主張する無権代理であるとか、弁済であるとかは、いわゆる請求を理由あらしめる攻撃方法に過ぎないのである。

ところで、前訴の既判力の基準時である口頭弁論終結時が昭和三二年三月二七日であることは成立に争のない乙第四三号証の一、乙第四四号証によつて明らかであるが、原告が登記抹消の理由として述べている事柄は、いずれもこのときより以前に発生していることである。

従つて、原告の本訴における各登記抹消の請求は、前訴の判決の既判力によつて、当裁判所はこれと異る裁判をすることができないから、棄却を免れない。(古関敏正 石崎政男 高桑昭)

〔説明〕古い東京地裁の判決に(昭和七年九月二七日言渡、評論二一巻民訴五三八頁)、同一土地の同一の所有権移転登記の抹消を求める訴で、登記に至る経過が通謀虚偽の売買に因るか、解除条件附贈与に因るか、というような事実は、単にそれぞれ請求を維持せんがために主張された事実であるに止まり、各請求の同一であることを阻害しない、というのがあるが、本件もほぼその趣旨を同じくするように思われる。

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